親に「臭い」と言われるミックスキッズ。

汗腺の遺伝とデオドラント文化、そして子どものニオイを茶化す親。
あんな 2022.07.19
誰でも

こんにちは、あんなです。

このアカウントを初めて数年。本当にありがたいことに多くのミックスルーツ当事者の方々と繋がることができました。所謂「ハーフあるある」で盛り上がることも少なくないのですが、深く話を聞いていくと思わぬ共通点を持っている人が少なくないことに気づきました。

「親に臭いって言われるんですよね。」

体臭は人それぞれですので、最初にそう言う当事者に出会ったときは、それと「ハーフあるある」を紐付けることはんなく、「そうなんだ、人のニオイをそう言うのっていくら家族でも失礼だよね。」と答え、特になんとも思わずに会話は終わりました。

しかし、じきにこの悩みを抱える当事者が少なくないことに気付かされました。

遺伝の問題

汗が出る汗腺には2種類あります。「エクリン腺」と「アポクリン腺」です。

エクリン腺は全身のほとんどに分布しています。主に体温調節のために汗を出す汗腺で、分泌される汗は無味無臭です。一方、アポクリン腺はカラダの限られた部分にあり、特にワキの下に多く分布。独立して皮膚に開口しているエクリン腺と異なり、毛根に開口部があります。
kao.co.jpより

日本人を含む東アジア人口のうち、後者のアポクリン腺を持つ人は少なく、人口のほとんどが前者のエクリン腺を持っています。しかし、一歩東アジアを出れば、世界のほとんどの人は後者のアポクリン腺を持っています。そしてこのアポクリン腺は臭いの原因になることがあります。

「外国の人は体臭がある」というステレオタイプが日本にはありますが、実際には「東アジア人は体臭がない(少ない)」の方が正しいのです。東アジア人がイレギュラーなのです。

もし東アジア人と非東アジア人との間に子どもができた場合、必ずしも子どもにエクリン腺が遺伝するとは限りません。むしろ、アポクリン腺は顕性遺伝するので、ミックスルーツ当事者でアポクリン腺を持つ人は少なくないのです。

デオドラント文化が無い日本

日本人人口の中では少ないアポクリン線が遺伝した当事者。問題はこれだけではありません。

日本では、欧米圏に比べてデオドラントの文化が乏しいです。デオドラントとは、脇の下などに塗る消臭効果を持つケア用品です。日本でも脇の下などに塗る商品は存在しますが、注意が必要なのが、多くが「制汗剤」であるということです。

デオドラント→体臭を抑えるための用品
制汗剤→発汗を抑えるための用品

つまり、制汗剤を使っても体臭を抑える効果は少ないということです。
日本でもデオドラント商品はありますが、種類が少なく、欧米圏のものと比べると効果も少ないです。

デオドラントがどれだけ欧米圏で浸透しているかというと、それを塗らずに外出することはマナー違反とされているほど、ほとんどの人が塗っています。私個人の経験でいうと(アメリカ)、体の変化を知るセックスエデュケーションの授業で、大人になるにつれて体臭が濃くなっていくので、デオドラントを塗るのはマナーですと学ぶほどです。学校でサンプルまでいただきました。

薬局に行っても、一列全部デオドラントコーナーであることも珍しくありません。

これら全てデオドラントです。

これら全てデオドラントです。

日本で一生懸命ケアしていても、もしかしたらその商品がそもそも消臭用ではない可能性があったり、日本の商品の効果が弱すぎる可能性があります。

ミックス当事者を含めて、もし自分がアポクリン腺の持ち主だな、と思われる方がいらっしゃれば(東アジア人でもアポクリン腺の割合は1割ほどあります)、少し値は張ってしまいますが、インポートショップなどで是非アメリカなど欧米圏のデオドラントをためしてみてください。

品川駅にあるAP by American Pharmacy でアメリカのデオドラントを見たことがあるので、お近くの方は是非。→AP by American Pharmacy

アメリカの薬局だと、DoveやSchmidt'sがメジャーなブランドで、最近だとNATIVEというブランドもよく見かけます。お試しください。

子どもに「臭い」と言う親

さて、これまでの文章は当事者の方々に向けて書かせていただきました。
海外では当たり前にデオドラント文化がある中で、それが無い日本で体臭を指摘されるのは、単に情報・ツール不足なだけだと私は思います。(体臭を改善する医療的なオプションもありますので、本当に深く悩みを抱えていらっしゃる方は是非病院で相談してみてください。)

しかしそれとは別に、「子どもに『臭い』と言う親」という問題があります。

愛を込めて相手のために指摘するのと、体臭についてただコメントをするのは違います。
実際にお子様の体臭について指摘するかどうか迷っている方がいらっしゃったら、是非東アジア人の体と欧米人の体が違って、海外では当たり前にデオドラントを塗っているのだと教えてあげてください。もしこの投稿が参考になるんであれば、私自身が当事者として書いているとお伝えいただいても構いません。

しかし、私が今まで聞いてきたお話だと、後者が圧倒的に多数であると感じました。
むしろ、冗談のように言ったり、解決策を提示せずに「臭い!」と出会い頭に言ったりする親御さんもいらっしゃるようです。

臭いの指摘は身体の指摘で一番傷つく、と聞いたことがあります。
ニオイは、自分ではわからない分不安になるし、精神衛生を崩すきっかけになってしまうかもしれません。それを冗談、ましてや悪口としてお子さんに指摘するというのは、本当に邪悪なことだと私は思います。

実際、体臭をとても気にしている当事者の方々に数多くお会いしました。
「アメリカに帰るたびに絶対にデオドラントは溜め買いするんです。」という方もいました。

体の一特徴であり、正しいツールさえあれば問題は改善できるのに、真摯に話をするでなくただ「臭い」とだけ伝えるのは、親族としていかがなものかと思います。もしこの記事を読んでいる方の中に思い当たる節がある方がいらっしゃるなら、反省し、今後はそのようなことはないように気をつけて欲しいです。

***

東アジア人のほとんどがエクリン腺汗腺であるところ、非東アジア圏ではアポクリン腺が主流であり、アポクリン腺は顕性遺伝すると書かせていただきました。つまり、東アジア人と非東アジア人との間に子どもができた場合に、このアポクリン腺が遺伝する可能性がとても高いのです。

しかし、エクリン腺がマジョリティの生活圏だと、正しいケアの方法や自分に適した商品と出会えていない場合があります。この記事をきっかけに、是非正しいデオドラント用品をお手に取ってみてください。

そしてミックスルーツ当事者のお子様がいらっしゃるご家族の方々ー
お子さまの体臭を茶化さないでください。もし必要であれば、上記のような正しいツールまで導いてあげてください。あなたの言葉に傷ついているお子さんは少なくないのです。

***

追記:最初に配信させていただいた内容で、「優性遺伝」という単語を使っていましたが、こちら現在では「顕性遺伝」の方が適切だとご指摘受けたので訂正させていただきました。

申し訳ございませんでした。

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