Cine-File Vol. 1 - MINAMATA

ジョニーデップ主演、MINAMATAを観賞しました。
あんな 2021.09.23
誰でも

こんにちは、あんなです。
無趣味な私ですが、唯一の趣味は映画鑑賞です。
週に4、5本は映画を見るのですが、せっかくなのでその一部を記録をしていきたいと考え、この度"Cine-File"というシリーズを始めてみました。

Cine-FileはCinemaとFileを合体させただけでなく、Cinéphile(フランス語で"映画狂")にもかけています(ダジャレ、かもしれません)。
今後、みなさんと映画の感想をシェアしていけたらと思います🎬
今までに引き続き、ニュースレターに登録してくださっている方はこちらに返信できますので、是非ご意見伺えたらと思います。

***

Cine-File記念すべき初の作品は、ジョニーデップ主演の『MINAMATA』です。

あらすじ:
戦場フォトグラファーとしてLIFE Magazineで大いに活躍したジーンは、キャリアの燃え尽きと離婚を経験し、酒に溺れる日々を送っていた。養育費を賄うためにカメラ機材の殆どを売り捌いてしまい、現場に戻る意欲も残っていない。そんな中、いつか受けていたフジカラーの仕事のために職員とアイリーンがジーンの自宅を訪れる。その後アイリーンと酒を飲み、夜の終わりに彼女がジーンとの仕事を受けた理由を明かす。熊本県で起こっている水俣病の実態を彼に取ってもらい、その事実を世界に知らしめたいというものだ。始めは消極的なジーンも、アイリーンから渡されたファイルを読み、失いかけた情熱にまた火が灯った。自らLIFE Magazineに訴え、アイリーンとともに水俣市に向かったーー
(あんな)

水俣病とは:

日本に暮らしている方なら一度は耳にしたことがあると思いますが、改めて水俣病事件がどういったものだったのかおさらいしてみましょう。

水俣病とは、チッソ株式会社の産業活動によって生み出された有機水銀を含む有害物質を未処理のまま不知火海に大量に排出したことによって環境が汚染され、食物連鎖を経て人体に取り込まれたことによって起きた公害病です。中枢性の神経疾患が主な症状です。更には、胎盤を通じて感染するというこれまでに無い公害病の特徴がありました。

水俣病で苦しんでいる人々は5万人にも登ると言われており、世界最大規模の公害事件です。今でも医療救済を受けている患者が多数いる病です。その後水俣病患者とその遺族がチッソ株式会社を相手立てて裁判を起こし、チッソ株式会社の不法行為が認められました。訴訟で認められた賠償金の額は日本の歴史上最も高額なものです。現在でも被害者救済をめぐって裁判・国会での議論がなされています。

その中でも特筆すべきは、当時総理大臣だった安倍晋三氏が2013年にした発言です。安倍氏は水銀汚染の防止を目指す式典に寄せたビデオメッセージの中で「日本は水銀による被害を克服した」との趣旨の発言をしました。今でも多くの人が水俣病に苦しんでいる現状から目を背ける発言だと多く批判を受けました。

(→熊本学園大学 花田昌氏資料より。)

映画 MINAMATA:

この水俣病の現状を日本のみならず世界に知らしめるのに一役を買ったのは、フォトジャーナリストのユージーン・スミスでした。そして本作は水俣病に特化した映画、というよりも、ユージーンと水俣病との出会いについて描いたものです。なので、水俣病とその訴訟等の行方について観たかった、という方には少し趣旨が違ってうつると思います。

一番最初のシーンからガツンとくるこの映画。最初のシーンだけでも皆様に是非観ていただきたい。

写真家であるジーンの目線で見る水俣病。映画のショットは全て、どこで停止ボタンを押しても美しく映るような “写真的”な映像です。その美しいショットの中でも、頻繁に登場するのが “水”。海で祖母と一緒に貝を拾う子供たち。濡れた洗濯を干す女性。食卓に並ぶ魚。人々の生活がどれだけ水と密着しているかを表しています。

そしてもう一つのテーマがユージーンの成長と、制作意欲を取り戻していく様です。熊本に到着したばかりのジーンは出された食事に手をつけようともしません。家に上がるのにくつを脱ぐことを忘れたりと、まさに異国人が来たという感じ。カメラを向けるも、人々は顔を背けます。けれど、少しずつ人々の生活を知るようになり、対話をし、共に戦い始めるジーン。印象的なシーンは、五右衛門風呂に頭まで浸かるシーン。これは、水の重要さと、ジーンの成長を共に表すものだったと思います。食事に手をつけることすらしなかったジーンが風呂に頭まで浸かる、まるで洗礼のようなシーンです。

カメラマンであるジーンが直接水俣病患者と触れ合うシーンもとても意義深いです。まずは公園で出会う少年。燃え尽きを感じてしまっているジーンとは裏腹に、少年はジーンのカメラに興味津々。手渡すと楽しそうにシャッターを切ります。写真の現像の仕方を文字通り手取り足取り教えるジーンに対して、少年は「僕の手触るの怖くないの?」と語りかけるシーンは胸が詰まりました。

次は、ジーンが滞在する家庭の長女、朋子さんとのシーン。朋子さんの母親が街に買い物に出かける最中に「娘を見ていてほしい」と頼まれるジーン。戸惑う彼だが、次のシーンではベランダで動けない彼女を抱きかかえ、子守唄がわりにボブ・ディランのForever Youngを口ずさむ。

少しずつ情熱を取り戻し写真を撮り続けるも、様々なトラブルに遭うジーン。諦めかけるも人々の想いを目の当たりにして動き続ける。

こうして少しずつ街の人々と心を通わせて取ることができたのが、ユージーン・スミスの作品で最も有名であるTomoko and Mother in Bathです。以下が実際の作品です。

Tomoko and Mother in Bath - Eugene Smith Archives

Tomoko and Mother in Bath - Eugene Smith Archives

まるでミケランジェロのピエタのような美しさ。映画の中でも最も美しく、丁寧に描かれているシーンでした。チッソ株式会社で起こった暴行事件の後、包帯だらけでシャッターを切ったこの作品。その不器用であるも、動かされている様子は、ジーンがカメラを教えたあの少年を思わせます。

反発するチッソ。戦う市民。写真を取るジーン。とても満足な作品でした。

あんな的評価:

ストーリー性:★★★★☆
演技:★★★☆☆
映像美:★★★★☆
独創性:★★★☆☆
メッセージ性:★★★★☆

総合:★★★★☆(3.6)

***

日本では本日23日公開です。是非映画館に足を運んでみてください。もしご覧になられた方はこちらに返信する形で感想を教えていただけると嬉しいです。☺️

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