#stopasianhate

米国のアジア人コミュニティではこの事件をきっかけに怒りが爆発し、著名人を含む多くの方が声をあげています。

オークランドであった集会では、女優サンドラ・オーさんが「私はアジア人であることを誇りに思います！」とメガフォンを片手に民衆に訴えかけました。

ニューヨーク州ではコロナ禍のこの1年でアジア人に対するヘイト・クライムの数が1900%も上がりました。アメリカに住むアジア人は、近所のスーパーに行くだけでも命の危険を感じながら生活しています。私の友人たちはなるべく外出を避け、親や祖父母の外出の際に同行するなどしているそうです。

アジア人は長らく「モデル・マイノリティ」と言われてきました。まじめで、勤勉で、辛い仕事を文句を言わずに進んでする。実際、アイビーリーグの進学率も高く、トップ企業への就職率も高いです。

けれどもこれは「アジア人が他の人種より優れている」からではありません。
1965年の移民改正により、高等教育を受けている方がアメリカへの移民がしやすくなりました。そのため、アメリカに移住したアジア人は、ある程度の教育を既に受けている人が多いです。

奴隷制度によってアメリカに無理やり連れてこられた祖先を持つ黒人の方々や、地続きのためアジアよりも移民が多い南アメリカ系移民の方々とは、そもそもでもグラフィックが全く異なるのです。

さらに、この「モデル・マイノリティ」の神話はアジア系移民を苦しめるものでもあります。アメリカ社会に（白人に）受け入れられるためには、さらに努力し、良い大学に入り良い行いをしなければならないというプレッシャーがあるのです。「普通」ではダメで、「優秀」であってやっと、アメリカに「いても良い」と言ってもらえる。そもそも平等であったらしなくても良い努力を強いられているのです。

第二次世界大戦中、アメリカに住んでいた日系日本人は強制収容所に入れられ財産を奪われました。敵視されないため、社会に受け入れられるため、日系日本人たちはアメリカ社会に適応（同化）するために様々な努力をしました。今でも、自分の子供に母国語を教えない（家庭でも英語で喋るようにする）アジア系の家庭は少なくありません。

更に、モデル・マイノリティ神話は実在するアジア人差別を透明化させてしまうという問題もあります。「アジア人は大学進学率が高いから差別を受けていない」「アジア人は有名企業への就職率が高いから差別を受けていない」「アジア人は他のマイノリティに比べて平均収入が高いため差別されていない」など、上記の"しなくても良い努力"の存在が認識されなくなるのです。

もう一つの問題はアジア人女性のフェチ化です。

アジア人女性のステレオタイプは、小さくて、優しくて、全てを受け入れてくれて、文句を言わなくて、家事までしてくれる。母国に妻がいるとも知らず、健気にピンカートンの帰りを待つ蝶々さんのイメージから何も進展していません。

アトランタの襲撃も、このアジア人フェチが大きく影響しています。
犯人は、店に入るなり「アジア人は皆殺しだ」と叫び銃を放ったそうです。

ターゲットにしたのは、マッサージ店。
アメリカでは「アジア人女性が経営している」典型的なお店です。（その他にはネイルサロンなどもアジア系経営者が多いです。）

警察の発表によると、犯人はアジア系女性が経営するマッサージ店が彼の「セックス依存症」を刺激するため、誘惑を無くすために殺した、と証言しているそうです。つまり、女性をターゲットにした「フェミサイド」でもあるということです。

犯人にミソジニーとアジア系女性に対する性的なコンプレックスがあることは明確ですが、私が今回特に怒りを感じているのが米国での報道、警察の対応です。

このケースのスポークスパーソンだったジェイ・ベーカー警部が、記者会見にて"He was having a bad day." （彼は気分が良くない１日を送っていた。）と犯人を庇うような発言をし批判されています。後々、彼が自身のフェイスブックにてコロナウイルスを「COVID-19 中国から輸入されたウイルス」と書かれたTシャツを購入していた投稿が発見されています。（この一件から、ベーカー氏は現在スポークスパーソンでは無くなっていますが、それ以外の罰則は報告されていません。）

犯人を庇うレトリックはこれに止まりません。「セックス依存症だった」とヘイト・クライムであるという認定することから遠ざけるばかりか、中には「糖尿病だった」という理由まで挙げられていました。

海外のニュースメディアで報道されている「アジア人は皆殺しだ」という捨て台詞も、米国のニュースでは報じられておらず、今回の事件がヘイト・クライムではないものとしようとする動きが見受けられます。

襲撃されたマッサージ店で性的なサービスが行われていたことは確認されていないにも関わらず、殺害された女性たちをセックス・ワーカーだと主張する人も散見されています。

まず、これは不実です。アジア人女性のマッサージ店＝性的サービスが行われる場所、という風に断定することそれが、アジア人差別・アジア人女性の性的モノ化を表しています。

次に、仮に彼女たちがセックス・ワーカーだったとして、今回の事件が差別的であり残虐であることには変わりありません。「セックス・ワーカーなら殺されても良い」なんてことにはならないはずです。このような発言をされている方はまず自分の中にあるセックス・ワーカーへの差別心を認識してください。

更に、アメリカではセックス・トラフィッキング（性奴隷の人身売買）が大きな問題となっています。中でも、アジア人女性のフェチ化の結果、多くのアジア人女性が被害者になっています。襲撃されたマッサージ店が「性的サービスを行っていた」と主張するのは、そのような現状をも無視するような憶測です。

更に私を驚かせたのは、このような主張が日本でもされているということです。

ツイッター上でも、「マッサージ店じゃなくて風俗店だったらしい。」などとコメントをしているアカウントが多数。そればかりか、被害者女性が韓国人だったため、韓国人女性に対する差別的なツイートをしているアカウントも目立ちます。

私はアメリカでアジア人として育ちました。

「どこからきたの？」
「日本だよ。」
「へー！私フライド・ライス大好き！」
「それは中国料理だよ。」
「こんにちは、ってあれでしょ、アニョハセヨでしょ！」
「それは韓国語だよ。」

このような会話は人生で何度もしてきました。
アメリカでは、アジア人同士の違いは殆ど認識されていません。

コロナ禍、多くのアジア人が「中国に帰れ！」と言われました。それは日系人も例外ではありません。

今のアメリカでは、殺された8人の中に日本人がいても全くおかしくないのです。

日本でも未だに「武漢ウイルス」などという言葉を使っている人がいます。
単なる差別であるという単純な理由からも止めるべきですが、これらはグローバル社会において自分たちの首をもしめる行為なのです。これは、アメリカに限られた問題ではありません。

この件でいくつかツイートした私ですが、以下のようなレスポンスがありました。

「遠く安全なイギリス」？
入学直後の秋、私が通うキャンパス内で、私が毎日のように行っている図書館の目の前でアジア系の学生が5人グループに殴る蹴るの暴行を加えられるという事件がありました。その後キャンパス内ではセキュリティ強化がなされ、キャンパス周辺は警察のパトロールの頻度が上がりました。

それ以外にも、イギリスではアジア人に対するヘイトクライムが300%上昇しており、イギリスに住むアジア人の生活を脅かしています。

「武漢ウイルス」「Chinese Virus」「Kung Flu」など、COVID-19を人種や地名と結び付けて呼ぶことは、これらの事件に直結しています。海外にいたらその被害者になるであろう日本人が、日本からまさにそれをしているという滑稽さが、その人たちの無知さ、視野の狭さを表しています。

今回のアトランタの事件は、長らくアジア人・アジア人女性に対する差別を放置した結果であり、偶然ではなく必然です。この事件を機にアメリカでは#StopAsianHateの動きが盛になり、多くの人々が声をあげています。

この重要な時に、あなたはどちらの立ち位置にたちますか。
差別主義者側か、差別と戦う側か。

今回のニュースレターから返信が可能になりました！
是非この件について思うことがあれば、お返事いただければ嬉しいです☺️