Cine-File Vol.4 - グレート・インディアン・キッチン
こんにちは、あんなです。
今回のCine-Fileは『グレート・インディアン・キッチン』です。
美味しそうなタイトル。けれども内容は全然美味しくない。
あらすじ:
お見合い結婚を通じて「いいとこ」の家庭に嫁いできた主人公。
「家事は女の務め」と思い、一生懸命に家事をこなすものの、嫁ぎ先の前時代的な感覚に戸惑いを隠せない。
歯ブラシに歯磨き粉をつけて手渡さないと歯磨きをしない義父。
自分の食事は男性が食べ終わり、彼らの食べかすを掃除してから。
就職したいと言っても義父から断られ、夫の答えもあやふや。
月経中の女性は不潔だと言われ、隔離され、ベッドにも寝かせてもらえない。
インドの女性たちが感じている生活の中の性差別を見事に表した作品です。
家事って汚い:
美味しそうなインド料理が作られるシーンが次々に出てきますが、家事経験者は絶対に「うっ」と思いながらでないと見ることができません。
ことの前兆は、夫が自分が飲んだ紅茶のマグカップを洗わずにシンク側に置いていくことから始まります。「ん?」と思いながらもとりあえず洗う主人公。
そして始まる朝食作り。
揚げ物で飛び散る油。
小さな洗面台には大きすぎる鍋。
なんとか朝食を出し終わり、食器を片付けにいくとテーブルの上に夫と義父が吐き出した食べかすが。それを素手で片付けなければならない。
食べかすの呪いはそれにとどまらず、食器を洗う最中に排水溝に詰まる食べかす。黄色に染まる水の中に手を突っ込んで取らなきゃいけない。(やったことあるー!😭)
そんな家事の大変さにはお構いなしの男性人。
炊飯器は使うな、残り物を出すな、洗濯機を使うな、ミキサーは使うな、昼は外食じゃなくて弁当がいい。「これが伝統だ」と、文句は言うけど家事はノータッチ。
義父のパンツを手洗いし、ご飯を釜で炊き、夫の弁当箱を洗う日々。
彼らはこの一つ一つの要望によってどれだけ負担が増えるかを想像もしない。
お茶の作り方ひとつにまで文句をつけてくる。
彼女が1日の大半を過ごすキッチンは、豪華な家の中で最も質素な部屋。
臭くて暑くて、設備も悪い。
壊れているパイプを直して欲しいと夫にお願いしても、「忘れてた」と永遠に直してくれない。彼はキッチンを使わない。
「今日は俺たち男性陣が料理を作るよ」というシーン。
キッチンに戻った主人公は愕然。信じられないくらい汚れている。
もちろん洗い物は全くされていない。
女性の大変さに対して全く寄り添わず、知ろうともせず、自分に都合が良い古いしきたりを守ることを押し付ける。
女性が意見をしたり、彼女自身の人格が顕になると怒ったり拗ねたりする男性たち。
これって、なんだか誰もが聞いたことがある状況ですよね?
遠いインドの話ではなく、日本でも映像を通じて「あぁ…」となる人は多いと思います。
同じことが世界中の女性に起こっていることが改めてわかります。
性に触れる:
この映画の特筆すべき点は、女性たちの性事情に目を向けた点です。
月経を不潔なものとして扱う文化圏で、主人公は生理中は別の部屋で寝泊まりし、ベッドではなくマットレスの上で寝なければならない。
人にも会ってはいけないし、物にも触れてはいけない。
ただひたすら、隔離部屋で暇を潰す。
夫が仕事に出かける際、バイクが横転してしまうシーンがありました。
とっさに彼に駆け寄る彼女ですが、「触るな!」と彼に怒られます。
彼女の優しさよりも、「不潔」だという感覚が先行することにショックを受ける彼女。
月経以外にも、新婚夫婦のセックスライフにも触れられています。
妻の務めと、痛みを耐えながら毎晩夫の誘いを受け入れる主人公。
だけれども、夫に「痛い。前戯してくれないと。」というと思いっきり拗ねる。
「君はこの件について詳しいようだね。」と嫌味まで言われる。
救いようのないほど辛い家事・家族シーンが続くこの映画。
けれどもさすがインド映画。最後は痛快です。(ダンスシーンもあります🕺)
主人公のフェミニズムが花開いていく過程をご覧あれ。
PS - 家事を担当していない人はこだわる権利はないし、口出しするのはやめよう。
口出しするなら自分でやろう。
あんな的評価:
ストーリー性:★★★★☆
演技:★★★☆☆
映像美:★★★★☆
独創性:★★★★☆
メッセージ性:★★★★★
総合:★★★★☆(4.0)
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