Cine-File Vol. 2 - WHOLE/ホール
こんにちは、あんなです。
先日一足お先に映画『WHOLE/ホール』を観させていただきました。
今回はその感想を綴らせていただきたいと思います。
【あらすじ】
ハーフの大学生、春樹(サンディー 海)は親に相談せずに通っていた海外の大学を辞め、自分の居場所を見つける為、彼の生まれ故郷である日本に帰国する。春樹は日本に着くやいなや周囲から違うものを見るような目に晒され、長年会っていなかった両親にも理解してもらえない。ある日、春樹は団地に母親と二人で暮らす建設作業員のハーフの青年・誠(川添ウスマン)に出会う。「ハーフ」と呼ばれることを嫌い、「ダブル」と訂正する春樹と違って、誠はうまくやっているようにも見えるが、実は国籍も知らず会ったこともない父親と向き合うことができない葛藤を抱えていた。様々な出来事を通して彼らは「HALF/半分」から「WHOLE/全部」になる旅を始める。
最初にWHOLEのポスターを見た時に、私は目を奪われました。
そこに私がいたからです。

映画『WHOLE/ホール』ポスター
「私は日本人です」と人生で何度言ったことがあるだろう。
「ハーフ」と呼ばれる私たちに対する「WHOLE」というタイトル。タイトルだけで、胸の中のしこりが少し溶けるような想いでした。
「ハーフ」のイメージはこれまで散々メディアによって作られてきました。私たちが感じる様々な傷は、このメディアに形成された自分とは異なるイメージからくるものも少なくありません。
「ハーフモデル」「ハーフメイク」「外国人風ヘアー」
その全てが私たちを縛りつけ、でも実際は私たちのほとんどが社会が期待するような「ハーフ」ではありません。
WHOLEの主人公の二人も、テレビで見るようなキラキラした「ハーフ」ではありません。私は、メディアで初めて「自分」が表されていると感じたように思います。まるで私の人生を覗かれたかのような感覚でした。
突然ですが、私は納豆が食べられません。
小学生の時に食あたりになって以降、受け付けなくなってしまいました。
日本生まれ日本育ちの人も納豆が好きじゃない人は多く存在すると思いますが、私は自分が納豆嫌いであることがコンプレックスです。
映画内でも主人公が聞かれる「納豆食べれる?」という質問。
私も「日本人度」を図るツールとして何度も聞かれてきました。
けれど私の場合、この質問に「食べられません」と答えると、必ず「外国人の口には合わないっていうよね」なと言われてしまいます。
このような、物差しや踏み絵のように私たちを試す質問は多数あります。
「箸は使えるか」「英語はできるか」「日本食は好きか」「日本の歌は好きか」
これらの質問に私を含む多くのミックスルーツの持ち主は「どう答えたら仲間だと思ってくれるだろう」と気を使いながら答えてきたのだと思います。作中でもこのようなシーンは多々あり、各々が慣れた様子で返答しています。ですが、そもそも最初から「仲間」と認識されていたらこのように試されることはないのです。
「片親が日本人」ということしか共通性を持たないマイノリティーグループである「ハーフ」。例えばアジアの国とのミックスの人、ブラックルーツを持つ人、イスラム系のルーツを持つ人とでは、同じ「ハーフ」とグルーピングされても、その中にはもっとミクロなグルーピングがあり、そのそれぞれのグループが違う悩みやしこりを抱えています。
当作品では主人公を一人ではなく二人にしたことで、「ハーフ」同士の人生の差異も描かれることができたのではないかと思います。白人でお金持ちな父親を持ち、「ハーフ」を「ダブル」に訂正する春樹。父親(非白人)がどこの国から来たかわからなず、母子家庭で育ち、自ら自分のルーツを冗談として消費する誠。(ミックスルーツのみなさんは自分のルーツに関する"小ネタ"持ってますよね。生きていくための手段だったとはいえ、自分が道化師にさせられていたんだと気づき、数年前から私はこれらの"小ネタ"を封印しました。)
「ハーフ」当事者の二人が、たまたま入ったラーメン屋で出会い、互いに家族構成や生い立ちも違う中、共通する悩みや感覚を静かに感じあう。けれど、それと同時に同じ「ハーフ」でも違う悩みやことの感じ方がある。
私たちが普段感じている、縫い針で刺されるような細かいちくちくとした痛みがそのまま描かれていました。是非皆さんにも観て頂きたい作品です。
WHOLE/ホール公式サイト:https://www.whole-movie.com/
UPLINK吉祥寺:https://joji.uplink.co.jp/movie/2021/10522

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