「男性の生き辛さ」と「女性の歩み寄り」
こんにちは、あんなです。
先日笛美さんが「男性の生き辛さ」を解決するヒントになるツールをまとめたnoteを作ってくださいました。大変有益であり、もし今困っている方がいるなら是非見てみて欲しいと思います。
大変有益なこのツールですが、このnoteが書かれるまでの経緯は決して長閑なものではありませんでした。(以下は私の観察から書くものであり、笛美さんの意見や発言ではありません。)
これまで、私たちフェミニストはたくさんの問題について声をあげてきました。
女性のリプロライツ、性的モノ化への反対、性犯罪の法的扱いへの異議、賃金格差、女性政治家の少なさ、女性の非正規雇用問題、夫婦別姓制度の導入…
挙げたら切りが無い数の問題と向き合い、声をあげ、問題の改善に向けて奮闘してきましたし、今でもそれが続いています。
けれども、その節々で目にする発言が「男性の辛さはどうなんだ!」という発言です。
「男性の生き辛さ」を訴えてくる人はどこからともなくやってきて、彼らは女性差別問題が言及されている場で最も活発です。
例えば最近話題となった#生理の貧困問題。多くの女性(特に未成年者)が清潔な生理用品を手に入れることができずに困っているという現状に対して、その改善を求めるための動きでした。昨日スコットランドでは全土で生理用日を必要とする全ての人に無償でそれが提供されることが決まった中、日本では未だに贅沢品と同じ税率で売られています。
学校で無料でおいて欲しい、必需品なので税率を下げて欲しいという訴えがなされている場にも、彼らはやっぱりやってきました。「男性だって辛い」と。
多くの場合、彼らのアカウントを覗くと「男性の辛さ」を改善するための動きや、具体的な対策などは挙げられていません。もう一つの特徴は、女性差別解消のために作られたハッシュタグをもじったハッシュタグを使う、という点です。
ここからも、女性差別問題を見てから男性の辛さを主張しているという順番が見受けられます。最初に発せられた問題点を沈黙化させるための主張でしかなく、本人たちは本当に現状を改善しようという気が無いのです。女性を黙らせることが主な動機なのです。
これが顕著に現れるのは3月8日「国際女性デー」です。様々なイベントの告知などに、「男性だって辛いのにどうして国際女性デーで女性だけに注目するのだ!」というコメントが散見されます。けれどもなぜか彼らは11月19日がなんの日か、という質問に答えられません。11月19日ー国際男性デーです。
女性差別や女性に特価したイベントは、これまで「どうして男性に対する考慮が無いのだ!」「辛いのは女性だけではない!」という言葉に散々いじめられ、今では「みんなの辛さ」を主張しなければ耳を傾けられないという状況になってきてしまっています。
以下の国際男性デーと国際女性デーのハフポストジャパンのコメントからもそれが読んで取れると思います
女性デーになるといきなり「性別関係なく」という文言が入ってきます。
このように、女性が問題を改善しようとするたびにやってくる「男性の辛さを考えろ」の群衆に疲れ果ててできたのが今回のnoteであると私は観察しました。
まとめのnoteを作られる前にツールを募集されていた笛美さんのツイートが以下です。
これに対して私もいくつかサジェスチョンをさせていただきました。
うつ病の男女比は1:2と言われていますが、男性の方がアルコール・薬物依存症、反社会性パーソナリティ障害、DV加害、自殺率が高い。「男性の鬱」は女性のそれと同じではなく、男性が幼い頃から教えられる"boy culture"の弊害について書かれています。
実際、男性の辛さを見える化させるためのツールのサジェスチョンの多くは女性によってなされたようです。
本当に男性の生き辛さを解決したいと思っているのならば、このようなツールのまとめをそれを問題だと思っている男性が行い、男性が広めていてもおかしくないのですが、私が知る限りだとここまで包括的なまとめはこれまでありませんでした。(笛美さん、本当にありがとうございます🙇♀️)
この「男性の生き辛さ」の件についてさらに特筆したいのは、これまでフェミニストがこの問題に対しても言及してきたという事実です。男性を悩ますホモソサエティー、トキシックマスキュリニティ、オールドボーイズコミュニティ…その有害性についても主張し、男性への悪影響を懸念してきました。
けれども、女性の問題を言及する上で男性の生き辛さにも触れないと攻撃されるという今の現状は有害でしかありません。本当に困っているのではなく、ただ女性を沈黙化させたいだけならば更に意味がありません。
フェミニストを攻撃しても男性の生き辛さは解消されません。なぜならその生き辛さを作っているのはフェミニストではないからです。男性の生き辛さについて言及しなくてもフェミニストとして成立するし、各々が自分が問題だと感じる事柄について個人個人で言及していけば良いのです。
この問題は、「本当に男性の生き辛さに困らされている男性」にとっても迷惑であるという点でも有害です。
笛美さんがまとめてくださったツールからもわかるように、実際にこの男性の生き辛さ解消に向けて奮闘している方は多くいらっしゃいます。彼らは決して女性差別問題を踏む意思はなく、男性が「有害な男性らしさ」から開放されるために様々な取り組みを行ってらっしゃいます。
もちろん私も、男性が有害な男性らしさから開放される社会を望んでいます。
「男なんだから〇〇」と言われなくても良い社会へ、自由に感情を表し、好きな自己表現ができる社会になって欲しいです。
けれども当事者ではない私はそのムーブメントのリーダーにはなれない。当事者である男性でしか、その変化は起こせないのです。
なのにも関わらず、今回笛美さんが作ってくださったnoteに対するリプライの多くは、彼女を個人ではなく「女性」とくくり、「女性が歩み寄ってきてくれて嬉しいです」というコメントが目立ちました。そしてさらには、ここまで御膳立てをしてくれたにも関わらず、さらなるケアを彼女に(女性に)求めたのです。
私はその底知れない図々しさと無自覚さに憤慨しました。
散々これまで沈黙化をさせられ、それを止めるためにやっとの思いで作られたであろうツールのまとめ。それでも尚更に彼女に甘えようとする。
さらなるケアばかりか、男性当事者ではない彼女に対して「わかっていない!」などと文句を言う男性までいました。
分ける必要ないんだよ。
同じ人間。
楽しい時も辛い時も平等にある。
結局これも「わかってほしい」という甘えの現れだと思います。
案の定、これらのアカウントを除いても、彼らが女性差別について「わかっている」様子は見受けられません。
今回のまとめツールは、大変有益です。
本当に助けを必要としている男性にとってヒントになるという点でももちろんそうですが、今後「男性の辛さ」を主張する男性に対してはこれを紹介すれば良いという意味でも、とても助かることでしょう。
けれども、そのまとめのツールを女性が募り、多くの女性がツールを提案したという事実、そしてそれが出来上がるまでの経緯(女性差別問題の沈黙化のために叫ばれる男性の辛さ)を考えると、手放しに喜ぶことができません。
このまとめができてしまった経緯を忘れずに、本当に助けを必要としている男性が自分にとって良いコミュニティやツールに出会えることを心から祈っています。
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